歯科医院を開業したらどんな困難が待ち構えているのか、具体的にイメージしたことはありますか?
開業後の未来について、現実を理解し対策を練るのが重要です。
この記事では、歯科医院を開業後の経営について詳しく解説します。
油断は禁物!経営に失敗する歯医者は増えている
歯科医院の経営は、年々難しさを増しています。
2018年に休業・廃業・解散に至った医療機関(法人、個人含む)は、400件ありました。
400件の内訳は「病院」が27件、「診療所」が305件、「歯科医院」が68件。とくに診療所の件数が2000年以降で最多、歯科医院が2番目の多さとなったのです。
歯科医院の開業は年間約2,000軒もあり、そのうち1,600軒前後が廃業に追い込まれています。
https://www.dentwave.com/article/infostation_research1802_2/
厚生労働省「医療施設調査・病院報告の概況」2014年
歯科医院を開業する前に「歯科医院の経営は思った以上に厳しい」ということをよく知っておくべきです。
競争が激化!歯医者の経営の実態は?
なぜ歯科医院の経営はこんなに難しくなってしまったのでしょうか。
主な理由は以下の2つです。
①歯科の競争が激化している
日本の人口減少が社会問題化している中ですが、歯科医院の数は平成8年からの20年で約1万軒増加しています。
今や歯科医院はコンビニよりも多く、コンビニの数が約5万5000軒なのに対し、歯科医院約6万9000軒もあるのです。
また、歯科医院は駅の近くなど、働く人にとって利便性の高い場所に開業するのがトレンドになっています。
確かに駅から近い歯科医院は患者さんにとって便利なのは間違いありません。
しかし、それを狙った歯科医院は既に増えすぎてしまっており、安易に駅前などに開業することでかえって集客に苦労する例が後を絶ちません。
競合が少なく、近くに歯科が少ない割に人口が多い場所を見つける必要があります。
②収益を出しづらい環境に変化
歯科医院は、以前と比べて収益が出しづらい環境に変化しました。
テナント代や設備投資はもちろんですが、詰め物金属などの歯材コストが上昇した影響も大きいでしょう。
そうした要因で、歯科医院の経営は以前と比べて、収益を出すのがかなり難しくなったのです。
診療報酬の「マイナス改定」が繰り返されるので、保険診療をどんなに頑張っても利益が少ないという状況に陥ります。
患者さんにとって丁寧な治療、良い治療をしようと思って動けば動くほど、赤字になってしまうという側面があるのです。
儲からないなんて嘘でしょ?開業後の歯医者の年収
開業後の歯医者の年収はけっして保証されたものではありません。
開業歯科医の約20%は年収300万円以下だとされています。
しかし、それと同じ約20%が年収3000万円を得ているのです。
※日本歯科医師会発行「歯科医療白書(2013年版)
年収の差は、やはり、技術力の差が大きく影響するのは間違いないでしょう。
しかし、技術だけでなく経営のセンス、集患の方法、従業員の育成も重要なポイントです。
つぶれる歯医者にならないために!経営をうまくやるには
歯科医院を開業したからには、長く地域のために診療を続けていかなければ、開業した意味がありません。
経営に失敗してつぶれる歯医者にならないために大切なことをいくつかお伝えします。
ほかの歯医者に負けない技術を磨く
他の歯科医師よりも優れた技術、特化した技術を持つことが最大の差別化です。
予防歯科や矯正歯科などトータル的な歯科診療を行う患者さんを多く抱えることができれば収入アップにつながります。
自費診療を得られる歯医者になる
少しずつ自費診療をしたくなるような情報発信を行いましょう。
自費診療を、経営のためだけに安易に患者さんにすすめると悪評がつくようになります。
まずは保険診療の過程で患者さんとの間に信頼関係を築いていきましょう。患者さんのことをよく知り、患者さんにとってプラスになるときにのみ、選択肢として自費診療を提案しましょう。
説得するのではなく、自発的に自費診療を選択したくなるようにするのがポイントです。
広告宣伝で集患する
広告宣伝で患者を集めることも大切です。
集客方法を考え、チラシ、看板、ネット広告などを打ち、認知を高めていってください。
トレンドや患者さんのニーズを見抜く
患者さんをただ治療するだけでなく、会話の中でニーズを見抜くことが大切です。
時代の流れに敏感になり、必要なる治療や伝え方を研究しましょう。
患者さんは矯正歯科に何ができるのかを知りません。
歯医者は積極的に患者さんへのメリットを伝えていくのが重要です。
保険診療でも問題ないですが、長い目で見ると自費診療を行うのがベストだという情報は伝えましょう。
日頃の会話や医院の発信物でニーズに応えた情報提供を行ってください。
よい口コミを得られる歯科になる
保険診療中の患者さんに好印象を与える従業員の育成はとても重要です。
従業員の存在により、リピートや患者流出防止、地域内の口コミ、ネット上の口コミにつながっていきます。
現在の歯科業界は決まった数の患者さんを取り合う構図となっています。
需要と供給のバランスが合わず、一医院が獲得できる患者さん数が減っているのです。
些細なことから生まれる口コミが、他の歯科との差別化につながり、集患のために重要となるのです。
開業する前に知っておくべき歯科開業のメリット・デメリット
歯科医院開業のメリットとデメリットを改めて確認してみましょう。
このメリットとデメリットを見比べて、ご自身で開業するかどうか、よく考えてみてください。
歯科を開業するメリット
歯科を開業するメリットは以下の通りです。
- 自由に開業地を選べる
- 内装・デザインを自分好みにできる
- イメージがついていないので新鮮さがある
- 新しい医療機器などを設置できる
勤務医と違い、自分の希望を形できる点がメリットです。
地域の中でどんな歯科になりたいのか、イメージを考えて具現化できる点は歯科医院のやりがいを感じる点でしょう。
歯科を開業するデメリット
一方、歯科医院を開業するデメリットは以下の通りです。
- 投資費用が多くかかる
- 必要な手続きがたくさんある
- 知名度がないので認知に時間がかかる
- 関係作りを一からしなければならない
歯科を開業し、経営を軌道に乗せるのはたいへんなことです。
もちろんやりがいはありますが、そのためにたくさんの投資を行い、リスクを負うことになります。
「本当に資金をかけてもうまくいく見込みがあるか?」という観点でしっかり検討し、準備するようにしましょう。
まとめ:歯医者の経営は開業前の綿密な準備が重要
歯科医院の経営は開業前の準備がすべてと言っても過言ではありません。
開業前に地域の状況をしっかりと把握し、どう戦っていくのか戦略を立てることがとても重要です。
ぜひこの記事を参考に開業後の戦略を練ってみてくださいね。