ペクトンアイボリーという素材に、どのような特徴があるのかご存知ですか?
ペクトンアイボリーには、土台に金属を使用する必要がないということなどから、金属やファイバーに変わる素材になると期待が寄せられているのです。
そこでこの記事では、ペクトンアイボリーの特徴や、どんな期待が寄せられているのかということについてご紹介します。
ペクトンアイボリーとはどんな素材?
まずは、そもそもペクトンアイボリーとはどんな特徴のある素材で、どのように開発されたものなのかをご紹介します。
ペクトンアイボリーとは?
ペクトンアイボリーとは、歯冠修復材料として国内で初めて薬事承認を受けた素材です。アイボリー色で軽く、骨と同じような弾性を持っています。
天然の歯に遜色ない機能を持った、優れた人工材料なのです。
フレーム材料として、メタルやセラミックとは違う高性能の「ポリマー」であり、歯のコア材はペクトンに変わる時代がくると期待されています。
ペクトンアイボリーの開発の背景
ペクトンアイボリーは、スイスのセンザメトー社によって開発されました。
センザメトー社は歯科の分野では有名な会社で、歯科用合金やアタッチメント(義歯と天然歯を連結する装置)のメーカーです。
センザメトー社では、脊椎損傷や頭蓋骨損傷、大腿骨損傷の置換パーツなども製造していました。これらに使われたいた素材がペクトンだったのです。これを歯科に応用したのが、ペクトンアイボリーなのですね。
ペクトンは医科領域では30年前から使われている安全が認められた材料なので、歯科でもCAD/CAMの進化により応用できるようになりました。
ペクトンアイボリーの特徴①柔軟性があり衝撃を吸収できる
ペクトンアイボリーの大きな特徴として「柔軟性」が挙げられます。柔軟性によって、噛むときの衝撃を吸収することができるのです。
柔軟性が高いため、歯根膜の無いインプラント補綴に適しています。
ペクトンアイボリーの特徴②軽くて違和感がない
ペクトンアイボリーには「軽い」という特徴もあります。素材が軽いので歯についていても違和感がないのです。
口内に違和感がないことで、自然な噛み心地を得ることができます。
ペクトンアイボリーの特徴③生態親和性が高くて安全
ペクトンアイボリーは、生体内で永久使用することが認められている素材です。
象牙質や皮質骨のような特性を持っており、ノンプレシャスメタルよりもより良い生体適合性があります。
このような生態親和性の高さもペクトンアイボリーの魅力です。
ペクトンアイボリーの特徴④加工がしやすい
ペクトンアイボリーは加工しやすく、チップの少ないマテリアルです。そのため、様々な用途の補綴物をインハウスで製造できるのです。
また、デジタル加工を行うので、時間とコストを削減できるほか、研磨がしやすいので、プラークの付着を押さえることができます。
土台に金属が不要!ペクトンアイボリーに寄せられる期待
従来は金属を用いて土台を作製する事も多かったのですが、多くの問題が出ていました。
ペクトンアイボリーには、従来の問題を解決できるのではないかと期待が寄せられています。
金属の土台で悩まされた3つの問題
金属の土台を使っている時に悩まされたのは、主に以下の3つの問題です。
- 硬すぎてしなりが無い
- 金属アレルギーの発症
- 歯や歯肉の変色
それぞれ詳しくご説明します。
①硬すぎてしなりが無い
金属は弾性率が高すぎるので、噛むことによって加わる力が歯の根に直接伝わってしまいます。その結果、歯の根を割ってしまう可能性があるのです。
割れ方によっては、抜歯が必要となるケースもあるので、注意が必要となります。
②金属アレルギー
金属のイオンが溶けだして、金属アレルギーの原因になります。
金属アレルギーというと、ピアスやネックレスなどのアクセサリーのイメージがありますが、歯科金属も大きな要因になるのです。
金属アレルギーになると、部分的にかゆみや湿疹が出るだけではすまないこともあります。身体の中に入った金属成分が汗と一緒に肌に出て、全身に症状が出てしまうこともあるのです。
金属アレルギーの症状が重い患者さんは金属を取り除く必要がありますし、まだ発症していない人も金属イオンが放出されている状態が継続すると、金属アレルギーを発症する可能性が高くなってしまうのです。
③歯や歯肉の変色
金属イオンによって歯や歯肉が変色することがあります。
一度、黒く変色してしまうと、それを解消するためにはさまざまな処置が必要となってしまうのです。
ファイバーポストでも問題があった
ファイバーポストとは、FRC(ガラス繊維強化樹脂)という支柱をプラスチックと使用する事により、金属なしで高い強度を実現させるものです。
ファイバーポスト自体は強くてしなりもあります。しかし、周りのプラスチックとのしなりや硬さが違う上、くっつく強度に問題があり、時間が経つと剥がれてしまい破損してしまうこともあるのです。
したがって、ある程度の歯が残っていないと、土台ごとかぶせ物が破損する恐れがあります。
ペクトンなら従来の問題が解決する
ペクトンなら、たとえ残っている歯が少ない場合でも、バラバラに破損することはありません。
型を取り、精密に元の歯とぴったり合う上、取り付けるレジンとも高い接着強度を持っているのです。
天然の歯に近いしなりがありますし、硬さにより歯の根が割れてしまう心配も軽減しています。
ペクトンアイボリーを購入するには
ペクトンアイボリーは、Cendres+Metaux社指定の研修会を受講した人のみ購入できるようになっています。
価格は以下の通りです。
ディスクの厚み16ミリ:7万8000円
ディスクの厚み20ミリ:8万3000円
ディスクの厚み24ミリ:8万8000円。
(直径はいずれも98.5ミリ)
まとめ:ペクトンアイボリーは金属やファイバーに変わる素材になる
ペクトンアイボリーは金属以上の機能を持ちながら、金属で感じられていた問題点を多く解消した優秀な素材です。
その機能は天然の歯と遜色がないことからも、金属やファイバーに変わる素材として普及していくものと考えられます。
これまで金属やファイバーで抱えていた治療後の不安も解消できることから、患者さんにおすすめしやすい素材だと言えるでしょう。