デジタルデンティストリーとは、患者さんの口腔内から補綴物までをデジタルで結ぶ治療のことです。
3DプリンターやCADCAM、口腔内スキャナーなどの機器を使用し、歯科技工データをデジタル化します。
デジタルデンティストリーは患者さんの治療時の心身的負担を軽減するだけでなく、医師のコストカットにも役立つのです。
しかし、デジタルデンティストリーは、まだ普及しきっているわけではありません。
そこで、この記事ではデジタルデンティストリーの現状と、これからの展望についてご紹介します。
歯科技工業務の進め方に革命!デジタルデンティストリーの現状
これまではまず、患者さんの協力を得て、石膏で模型をつくっていました。
その石膏を元にデザイン・作製されていたため、事業展開できる国・地域に制約があったのです。
しかし、歯科技工データをデジタル化することによって、歯科技工業務の進め方が変わりました。各国の法制度に合わせて、最適化することができるようになったのです。
データが共通言語となるので、どこの国からでも歯科技工物の外注を受け入れることができるようになりました。
デジタルデンティストリーにより、アメリカの安価な歯科技工物の1/3程度が、中国で作製されるようになったとも言われています。
コスト削減&治療精度向上!デジタルデンティストリーのメリット
患者さんはもちろんですが、歯科医師も歯科技工士も、歯科医療に関わるすべての人々にとって、デジタルデンティストリーはメリットがあります。
主に以下の3点です。
- 患者さんの治療ストレスの軽減
- 歯科のコスト削減
- 治療精度の向上
それぞれ解説していきましょう。
①患者さんの治療ストレスの軽減
患者さんはこれまでより格段に印象採得が楽になります。
口の中に物を入れずに、口腔内スキャナーで印象採得ができるようになるので、精神的負担をあまり感じずに治療を受けることができるようになるのです。
②歯科のコスト削減
歯科医師もこれまで印象採得や模型製作にかかっていた時間や費用が不要となるので、コスト削減が狙えるようになります。
歯科技工士も、ワックスアップや鋳造がなくなるので、負担が減り、かなり作業に余裕ができるようになるのです。
③治療精度の向上
印象はデジタルデータとなるので、印象材の変形や石膏の膨張による精度誤差が起きなくなります。
また、デジタル化とCAD/CAM技術によって、ジルコニアというマテリアルが、さらに手軽に高精度で扱えるようになるのもメリットと言えるでしょう。
まだ発展途上!デジタルデンティストリーのデメリット
デジタルデンティストリーは、まだ発展途上の段階です。
そのため、主に以下のデメリットがあります。
- 導入時に高額な費用が掛かる
- 発注できる歯科技工所が少ない
それぞれ解説していきましょう。
①導入時に高額な費用が掛かる
デジタルデンティストリーを進めようとすると、新たな機材が必要となり、導入のために高額な費用が必要となります。
口腔内スキャナーの価格だけでも、500万円~1000万円とまだまだ高額です。
投資対効果に見合わないケースが生じる可能性もあるので、導入時は投資対効果に見合うかどうか、検討が必要となります。
②発注できる歯科技工所が少ない
まだ日本でデジタル化に対応している歯科が少なく、発注できる場所が限られてしまいます。
発展途上であるため、デジタルオーダーに対応している歯科技工所の数が少ないのです。
ただ、今後はデジタルオーダーはもっと普及し、発注できる歯科技工所も増えていくと考えられます。
従来とデジタルデンティストリーでの治療フローの違い
デジタルデンティストリーにすると、これまでの治療フローとどのような点で違いが出てくるのでしょうか。
それぞれの工程ごとにどう違うのかをご紹介します。
①歯型を取る
これまでは、シリコーンなどの素材を患者さんの歯に直接当てて、印象をとっていました。
デジタルデンティストリーの場合は、患者さんの口腔内にスキャナーの光を当てて、印象(歯型)をスキャンします。
患者さんは口の中に異物を入れられることがないので、印象採得の際の負担が少なくなるのです。
②模型化する
これまでは、患者さんから直接取ったシリコーンの型に石膏を流し込み、模型を製作していました。
しかし、デジタルデンティストリーの場合は、歯型のデータをコンピュータ上で立体画像(模型)にします。
模型ではなくデータなので、管理がしやすく、歯型をどこへでも共有しやすいのが大きなメリットです。
③設計する
これまでは模型の上で、欠けている歯の部分にワックスを盛り上げて、鋳造の型にしていました。
デジタルデンティストリーの場合は、CADシステムを用い、つくる歯の部分をコンピューターでデザインするようになります。
④製作する
これまでは、鋳造の型で鋳造していました。
デジタルデンティストリーの場合は、CAMシステムを用い、CADでデザインしたデータから、素材のブロックを削り出して製作していきます。
⑤調整する
こちらはこれまでと変化はなく、最後に調整・研磨して仕上げるようになります。
このように、デジタルデンティストリーでは最後の調整・研磨以外で人による手作業が少なくなりました。そのため、作業は効率化され、ミスも少なくなるのです。
まとめ:治療の無駄をなくすデジタルデンティストリーはさらに普及する
治療の無駄をなくすデジタルデンティストリーは、患者、歯科医師、歯科技工士のどの視点から見ても、歯科治療を効率化させてくれる無駄のない方法であり、ストレスを軽減させてくれます。
しかし、まだまだ発展途上で、導入するときに多額な費用が掛かってしまうことは事実です。
費用対効果をよく見て、導入できるかどうかを考えてみましょう。
導入後は治療の負担が減り、より患者さんと向き合える時間が増え、治療の質が上がるはずです。